ミオシン走行の可視化に関する論文を読んでみた

アクチンとミオシンは筋肉の動きの基本!
そのミオシンの動きそのものの観察に成功したという金沢大の論文がNatureに載ったというので,読んでみました.
あ,内容の正誤については責任は負いません.
本当に知りたい人は本文をどうぞ
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature09450.html


動きを撮った動画がこちら

普通,たんぱくの動きを見たというと,
蛍光で修飾して観察するというものだが,
それではたんぱくの”移動”しか分からないので,
原子間力顕微鏡を用いてたんぱくそのものの”動き”を見たという報告.


ここで,観察されているのはミオシンのV(5)型.ミオシンにはたくさん種類があって,筋肉の収縮に用いられるのはⅡ型.
形状が異なり,V型はⅡ型より頭部の二股が長い
http://en.wikipedia.org/wiki/File:MyosinUnrootedTree.jpg


V型は細胞内の物質輸送に使われ,細胞骨格としてのアクチンフィラメント上を走行し,ダイニンやキネシン等が有名だが,それら同様に分子モーターとして働くとのこと.

腕の長さが大分異なるので,筋原線維の中での動きがどうなっているかということに直接つながるわけではないと思うが,とても興味深い.


観察はフレーム間は147msec.
これは原子間力顕微鏡としては恐ろしく速いらしい.
さすがに腕を振る過程を追えているわけではないが,
腕を交互に出しながら進む様子が明確に観察されている.


論文では,ATPの消費とミオシンの歩行中の状態に関して論じている.
ミオシン分子の歩行は,以下のようなプロセスで起こる:

  • ミオシン両足がアクチンに結合
  • ATPの結合により後ろ足が離れる
  • ATPの加水分解により脚を前に出す
  • Piの解離によりアクチンに強固に結合する(脚を下ろす)
  • ADPの解離(まだ強固に結合Butこの状態はレア)


ミオシンからADPが解離すると,ミオシンの2本足のヒンジ部分の剛性が上がる.(又をより広げた状態になりたがる)
しかしATPが来るまではアクチンと離れられないため,ひざを曲げたような形が観察される.


この膝を曲げた形状が前に出した脚なのか,後ろの脚なのか,
ATPの濃度に対してこの膝を曲げた状態が観察される頻度はどうなるのか.
これらを統計的に見て,ミオシンの各状態でのADPとの解離定数等を導出.
脚が後ろにある時のADPの解離定数の方が前にある状態より70倍も大きい ⇒ 方向性を以ってATPを分解しながら動いている
ということを証明している.


また,前足側の足踏み状態というのが観察されている.
前足にADPがついたままの状態で,一旦アクチンから離れて一つ前や後ろのアクチンサイトとにつく場所を変えたりしているという状態だ.
この足踏みは,ATPやADPの濃度が低い時,またアクチンに負荷がかかった時に頻度高く観察された.
このADPがくっついたままの足踏みを,負荷がかかっているときに行うということは,
脚を前に進める動作を何度もしているのと同じことになる.
(つまり,負荷がかかっているので,前足を外してるときに後ろ足が前に引っ張られて前に出る,しかしミオシンの形状の安定性により脚を前に出した方が安定なので,再び脚を出す.)
普段は脚を前に進めるのに1ATPを消費するのに対し,
この条件ではATPを分解せずにパワーストロークを行っているのと同じであり,
ATPを使わないForceの発生が存在するのではとされている.


筋肉のミオシンでも同様の事が起こるのでしょうか?
エネルギーの議論としても面白いなと思ったのでした.


大分頑張って読みましたが,色々間違ってるかもしれません.
もし間違い見つけたら教えてもらえるとうれしいです.